はま寿司にメニューとして採用された「ウロコマグロ」という魚についての記事が非常に伸びたので、さらにこの魚について深掘りしてみた記事です。
今回はさまざまな論文をあたってみて、気になるウロコマグロの生態に迫ってみようと思います。
前回書いた記事はこちらからご覧ください。
そもそもウロコマグロってどんな魚?
ウロコマグロ(学名:Gasterochisma melampus)は「ガストロ」とも呼ばれるスズキ目サバ科ガストロ亜科(Gasterochismatinae)ガストロ属(Gasterochisma)の魚類の一種です。サバ科の魚類の中では原始的な魚だそうです。
日本近海には生息しておらず、通常は南半球の太平洋に広く分布しています。
ただし以下の論文ではハワイ北部の北太平洋で漁獲されたと報告されています。初記録だそうです。珍しいから論文になったんでしょうね。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jji1950/40/4/40_4_482/_article
ウロコマグロは南半球に広く分布し、通常は南緯35度から50度の範囲で見られます。主にマグロやカジキなど大型魚を獲るために行われる延縄漁法という方法で漁獲されます。
何十キロメートルにもわたって船から延ばした長い綱(延縄)に、魚がかかるように餌を付けた針をたくさん付けます。そして、延縄を沈め、しばらく置いた後に引き上げる漁法が延縄漁法です。
海水温は8℃〜10℃と冷たい海域に生息しています。ミナミマグロと混獲される魚でもあります。
ガストロ亜科Gasterochismatinaeはこのウロコマグロ1種のみで構成されているそうです。
マグロと名前はついていますが私たちがよく知る本マグロ(クロマグロ)やメバチマグロとは遠い分類です。
生態はまだよくわかっていない新顔の魚
ウロコマグロははま寿司の寿司ネタに採用されるほどですので非常に美味しい魚なのですが、まだまだ生態はよくわかっていません。
ウロコマグロは英語圏ではbutterfly kingfish(バタフライキングフィッシュ)と呼ばれています。
日本で利用され始めたのは比較的最近のことで、ミナミマグロの混獲物(目的外に漁獲された生き物)だったそうです。
上記の論文によると、ウロコマグロの産卵地は南東太平洋の経度85〜130°、緯度28〜41°Sの間で、産卵期は4月中旬から7月中旬までとのこと。
産卵域の海面温度は14〜18℃と低く、80%以上がメスであるという繁殖特性を持っています。
ウロコマグロは餌を求めて回遊する摂餌回遊を行う魚で、大西洋、インド洋、太平洋を移動し、産卵のために南東太平洋に戻ってくるそうです。
1966年の以下の論文では「マグロ類似の魚類」と記されているだけであり、まだ和名も付けられていない段階であることがわかります。
さらにこの論文からは、1965年に「コケゴロモ」という和名が提唱されていたことがわかります。どういう意味なんだろうか。
1960年代の日本は世界最大の水産大国でした。世界中の海で漁業を行い、今私たちがあたりまえに食べている魚介類を「開発」してきたのです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jji1950/14/1-3/14_1-3_41/_pdf/-char/ja
脂肪が多く、色 は桃色を帯びた白色である。食用にたえる。とあります。美味とは書かれていないですね。笑
まとめ:論文がとても少ない、まだまだ開発の余地がある魚
ということで論文をいくつかあたってウロコマグロについて調べてみました。
- マグロと名前はついてるが遠い仲間
- 南半球、冷たい海に生息する魚。ミナミマグロと同海域
- 1960年代に日本で紹介され、利用されるようになった
- 世界的な海産物の高騰の影響で、2022年ごろから飲食店やスーパーなどで販売される様になった
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